雪と寒さと冷たい風と、山。
真冬ど真ん中の引越しだったので、日本一温暖な気候である東京都23区から東北への移動はまず寒さの洗礼。
けれど私は北海道内陸出身。
雪と氷点下が私のアイデンティティ。
寒いのが好きなわけじゃないが、雪を目にすると私の芯の部分がホッとする。
冷たい風が顔に当たると、本来の場所にいる感じが強くして、すごく落ち着く。
東京は本当に住みやすくて、好きだった。
でも「ここじゃない」感はやはり強くて、どこを見ても自分の居場所はない感じで落ち着かなかった。懐かしい景色、親しんだ光景、は視界のどこを探してもなかった。
やっと帰って来た。
そんな気がする。
吹雪に心が洗われる。
近くの山を見て、そして遠くの山を眺めた。
どちらも白く雪を被っている。
東京には空がない、と言ったのは智恵子。
私にとって東京になかったのは山だったんだなーと思う。
小さい山。遠くに見える高い山。
それがいつでも見られる。近くにある。
夏は緑、冬は雪。
やっと息ができる。